JPモルガンの新たな特許
米メガバンクのJPモルガンは、貸借プロセスを効率化できる、分散型台帳ベースのフロアプラン資金調達の仕組みについて、特許を出願した。主に自動車業界の資金調達プロセスへ用いることを意図する。
米国では、自動車ディーラーが在庫を担保としてメーカーから車両を仕入れる「フロアプラン」というローンの調達方法が一般的である。しかし、ディーラーが販売台数を銀行に偽って報告することがあり、サプライチェーンにとっては問題となってきた。
これを防ぐために現在、監査人がディーラーの敷地を実際に訪問して、車両に関する情報を収集し、融資対象の在庫が実際にあることを確認している。この作業には多くの資金や時間が費やされてきた。今回出願されたブロックチェーンによるシステムは、こうした作業を代替できるものになる見込みだ。
GPS情報もリアルタイム追跡
JPモルガンの新しい仕組みにおいては、すべての自動車がブロックチェーン上に登録され、あらゆる貸し手、ディーラー、自動車メーカーがGPS位置などリアルタイム情報にアクセスできるようになる。
アメリカでは、すべての自動車に、車両が誕生してから廃棄されるまで、車両識別番号(VIN)が割り当てられている。このVINとスマートコントラクトを組み合わせてブロックチェーンに固定することで、GPS位置や、経過年数、バッテリー寿命など車両の状態をリアルタイムで識別できるようになるという。
これによって「GPS位置などの担保監査に関連する重要な項目を追跡し、フロアプラン契約と結び付けることを容易にする」とJPモルガンは説明する。
さらに、今回のシステムは「ダブルフローリング」という慣行も防止するように設計されている。これはディーラーが、通常一つの車両につき一つのフロアプラン契約の担保とするところを、別の銀行との契約のためにも同じ車両を使ってしまうことである。
JPモルガンのブロックチェーン部門責任者によると、このシステムはディーラーによって試験的に使用されているところだが、まだ本格的な立ち上げにはいたっておらず、テスト段階にあるという。また今回のブロックチェーン・ネットワークは、自動車メーカーや、銀行、金融会社、通信接続できる機器のディーラーなど、より広い範囲でも応用できるだろうと語った。