機械学習によるBTCのリアルタイム価格予想
インドの名門Vellore工科大学のデータサイエンス研究生であるAbinhav Sagar氏は、機械学習によるビットコイン(BTC)の価格予想モデルを構築、そのプロセスと結果をブログで公開した。
Sagar氏が用いたのは、長・短期記憶(LSTM)ニューラルネットワークで、時系列データに基づく分類や処理、予測に適していることで知られている。機械学習やディープラーニング(深層学習)を用いた株価予測では、すでに製品化されているサービスもあり、ある程度の成功を納めているようだ。
一方、仮想通貨は歴史が浅く、規制環境などの政治的要因やセキュリティの問題、急速な技術開発など多くの要素が絡み合い、市場予測をより困難なものとしているため、機械学習の応用は限られたものとなっていると、Sagar氏は言う。さらに仮想通貨市場では、株式市場に比べ投資の指標が不足していることも予測を行う上ではマイナスだ。
このような背景を踏まえた上で、Sagar氏は、リアルタイムのデータ収集と学習用データ準備を行い、LSTMニューラルネットワークを構築していった。同氏が使用したのはCryptoCompareの価格や出来高、始値、高値、安値などのデータで、平均絶対誤差に基づいて結果を評価し、ディープラーニングによって生成された予測の結果をグラフ化した。(下記参照)
実際の価格(青線)と機械学習で予測した価格(橙線)の推移は、形状的には類似しているため、ディープラーニングによる価格予測が持つ可能性は示唆しているかに見られる。しかし、このグラフのように予測価格が実際の価格を「後追い」するようでは、現時点で予測として役に立つとは言い難いだろう。
データサイエンスと人工知能
一方、データサイエンスと人工知能(AI)の組み合わせが、様々な分野において大きな可能性を持っていることは周知の事実であり、世界の多くの企業や政府機関がすでに力を入れて開発に取り組んでいる。
機械学習分野の研究が進むにつれ、有効な機械学習モデルが構築され、人の手を介さずとも機械(AI)による深層学習が可能になる工程も増えて行きつつある。
またコンピュータの処理速度やビッグデータの処理技術の向上、さらにデータ解析手法のオープン化など、データサイエンスの発展に寄与する環境が急速に整ってきていることも、その普及を後押しする要因となっているようだ。
仮想通貨投資の分野でも、規制整備やセキュリティ環境の改善等が進むとともに、取引データの蓄積によって投資指標が充実していくにつれ、機械学習が得意とする数学的なアプローチによる価格予測の精度も上がっていくのではないだろうか。
国や企業による開発にとどまることなく、インターネット上には、個人でも基本から学ぶことによって、AIを利用した価格予想プログラムを開発できるツールが提供されている。また、Sagar氏もビットコイン価格予測に使用したコードを公開している。
もちろんこれらのツールは投資判断の一助に過ぎず、投資リスクを個人が負うものには変わりはないが、個人レベルでの知識や経験の向上は、業界全体の発展にも少なからず寄与していくと思われる。
参考: Abhinav Sagar