ブロックチェーン×貿易金融 米R3、Corda上で大規模なトライアルに成功

R3、25か国70社から340人以上の参加者

企業向けブロックチェーン開発企業R3が、同社のブロックチェーンプラットフォームCorda上で大規模な金融試験を完了した。

試運転には、日本のSBIホールディングスなどの金融大手を含む25か国70社を超える組織が参加し、最大規模の国際的な貿易金融トライアルとなった。

金融サービス、情報技術、通信、物流、海事産業、不動産、ホスピタリティ、自動車産業など様々な分野から340以上の企業関係者らが参加した。

この共同イニシアチブは、様々な業界において貿易金融と運転資本ソリューションの改善を提供することを目的としている。

今回の試験は、Cordaを基盤とするコンソーシアム、Marco Poloのプラットフォーム上で売掛金金融商品に焦点を当てたものだった。売掛金融資はファクタリングとも呼ばれ、企業が即座の現金支払いと引き換えに割引で売掛債券を第三者に販売することである。

企業が運転資本を最適化し、信用リスクを軽減し、流動性を改善することを可能にする。

Marco Poloの共同開発者であるアイルランドの企業TradeIXが、運転資本のアプリケーションを開発提供し、トライアルは7週間にわたって行われた。

プレスリリースによると今回の試験に伴って実施されたアンケートによると、回答者の100%が、ブロックチェーンに基づく貿易金融と運転資本ツールは、売掛金の割引プロセスを加速し、銀行と企業の両方のコストを削減する可能性があることに同意した。

また、回答者の75%は、5年以内にこうしたプロセスが実際に導入されると予測した。

今年1月に設立されたSBI R3 Japanは、SBIホールディングスを筆頭株主とする、米R3社との合弁企業(JV)で「分散台帳技術を活用し、新たな協業プラットフォームを創出する」ことをミッションにしている。

SBI R3 Japanインタビュー

SBI R3 Japan ビジネス開発部長の山田宗俊氏はコインポストの取材に応じて次のように背景を明かした。

ブロックチェーンを活用した取組には技術の優劣以外にも、アプリケーションを実際に使うエンドユーザーの巻き込みも重要であり、今回実際に70社以上がCordaを使った貿易金融取引を体感することができたと話した。

その結果、これまで紙やマニュアル作業に依存していた売掛債権の早期現金化に係る業務が、共通のユーザーインターフェースを通じて、認識相違なく迅速に完了出来ることを確認できた。さらに今回の取組みは、業務改善だけではない大きな可能性を秘めていると、山田氏は語る。

実はこの取組みの意味するところは、金融機関と事業会社間における単なる業務改善だけではありません。

Cordaが実現するP2Pな貿易金融取引は、金融機関と事業会社の伝統的な「関係」を変えてしまう可能性を秘めています。今後、事業会社による貿易取引が増加する中で、金融機関はより厳しい競争環境に置かれることになります。Marco Poloトライアルの成果により、金融機関は今「真に顧客本位なサービス提供とは何か?」を問われています。

また、SBI R3 Japanのプロダクトサービス部長を務める生永雄輔は次のように説明。

今回のトライアルは、国内外の大手企業が非常に多く参加しており、コンソーシアムチェーンが世の中に広まり始めた事を示す良い材料だと考えております。

ただ記録を残すだけでなく、価値の移動を実現するというブロックチェーンの本来の利用法に向かって、Marco Poloプロジェクトの利用が拡大することを期待しています。

今回の共同試験に参加した銀行には、オランダの大手銀行ABN AMRO、メキシコの銀行および金融サービス会社Banorte、Citizens Bank、Commerzbank AG、SBIホールディングス、東アジア銀行、サウジブリティッシュバンクなどが挙げられる。

銀行以外では、SBI R3 Japan、ドイツの大手自動車メーカーBMW、国際イスラム貿易金融公社、日本の総合商社住友商事、ドイツの銀行LandesbankBaden-Württembergの子会社である金融サービス機関SüdFactoringなどが参加した。

参考:MarcoPoloプレスリリース

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