スイス規制当局がICOの違法性について指摘

スイス金融市場監督庁(FINMA)はブロックチェーン・スタートアップのenvion AGが行ったICOが違法だとの見解を示した。envion AGはICOを通じ2018年に少なくとも3.7万人の投資家から9000万ドルの資金調達を行っている。

FINMAはICOを通じた資金調達を行うには銀行業のライセンスが求められるとしているため、ライセンスを取得していないenvion AGがICOを行うことは禁止されている。

envion AGは独自トークンのEVNを発行し投資家へ販売していた。資金調達は米ドルに加えビットコインやイーサリアムなどの暗号通貨を通じて行われた。EVNは30年後に元本が戻ってくる社債のような形で販売されており、発行には内部監査報告などのプロセスを踏まなければならなかった。

現在envion AGは、破産申請中で投資家から集めた資金の返金プロセスに入っている。一方で創業者の一部がEVNの不正利用を行っていたことがわかっており、どの程度の資金が投資家へ返還されるかは不明だ。

FINMAは今後もICO市場の動向を追っていくとしている。また、FINMAはICOを発行する際のガイダンスを公表しており、ICO自体を禁止しているわけではない。ガイダンスに従わなかったり違法性があると判断された場合、集められた資金は強制的に投資家へ返還させられる。

ICOは2017年頃から世間に登場し、新たな資金調達の方法として注目を浴びるようになった。ホワイトペーパーを書くだけで資金が調達できてしまう手軽さから詐欺などにも使われることが多かった。このため現在ではICO市場への注目度は低下傾向にある。

BinaceやHuobiといったICOを行った海外取引所は、潤沢な資金を元手に業績を伸ばしICOトークンの価格も安定している。

ICOの懸念点としては、資金調達を行った企業と行わなかった企業では資金力で違いがでるため市場競争を阻害する点がある。自由にICOが行える規制が緩い国に本拠地を置く企業が非常に有利になり、規制が厳しい国で活動する企業が資金的に不利な立場に追いやられるという弊害が生まれる可能性が高い。


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