「仮想通貨ビットコインは21年に10万ドル」PlanBがストック・フロー比率分析

PlanBが解説する、2021年の価格予想

仮想通貨(暗号通貨)ビットコインの中長期的相場推移を「ストック・フロー比率(S2F)」のモデルで分析するアナリストのPlanBは、引き続き5月の半減期は強気である観点を維持。最新の解説では、「100以上のファンダメンタルズが裏付けている」と説明する。

具体的なファンダメンタルズを取り上げず、短期的に少数のイベントを見るよりも、2021年12月まで、100以上のファンダメンタルズを全体的に俯瞰すれば、10万ドルに到達する可能性が高いと論じた。

PlanBが提唱するのは、ビットコイン(BTC)の発行上限を根拠に、Goldなどの稀少性を測るモデルを採用した「ストック・フロー比率(S2F)」による分析だ。

ストック・フロー比率(S2F)

ストック・フロー比率(S2F)は、貴金属(金や銀)などの希少性と価値を測るモデルとして利用されるもの。ほとんどの商品は、生産量が急増することで市場流通量が急増し、価格が暴落する。一方、金などの一部の希少性が高い商品は、市場に存在する量に対して年間の生産可能量が小さく、供給過多によって価格が暴落することがない。

実際に、以下の式で算出される各商品のS2Fを測ると、金の希少性が説明できる。

S2F=市場に存在する量(ストック)/年間生産量(フロー)

PlanBのストック・フロー比率(S2F)

同氏が、2009年12月から2019年2月のビットコイン相場データをもとに計算した、月々のBTCのS2FとBTCの時価総額をプロットしたところ、一定の規則性を発見。S2Fと時価総額の両方について対数をとり線形回帰を行うと、S2Fと時価総額の間に統計的に有意な結果が確認された。

PlanBは、2012年と2016年の半減期同様に、今回の半減期も強気な影響を与えると見ており、上述のファンダメンタルズに関して、「共同統合」というモデルで、図にある白い点について説明した。

白い点が数値1になった場合、ビットコインの価格推移はS2Fのモデル価格に一致するという。つまり、実際の価格と図で表す緑や赤の点と一致する場合を指す。現在ではその2つの価格はほぼ一致している状態だ。

過去の半減期における強気相場では、白い点は一気に数値1から下方へ乖離したことに対し、ユーザーは今回は白い点の推移が鈍化していると指摘。しかし、PlanBは、相場上昇(白い点の下方推移)の速度に比例するファンダメンタルズの発生に関して、「遅いか早いかあまり関係はなく、重要なのは共同統合が発生することだ」と説明した。

現在は、相場の上昇を示す赤い点に向かって、進んでいる模様だ。(青い点から赤い点に転じるタイミング)

またS2Fモデルにおいて、先日CoinPostで解説したように、5月半減期後、BTC時価総額は半減期後1兆ドルに達し、1BTCあたり55,000ドル(約600万円)を突破し得ると算出した。

そして長期的には2021〜2024年までの平均価格10万ドルにとどまると試算している。

S2Fモデルへの批判も

一方、S2Fモデルは、過去のBTC価格とS2Fの統計的傾向から理論価格を推測しているにすぎないことにも注意が必要だ。線形回帰による推定では、S2Fが高まれば高まるほどBTCの時価総額が高まるという結論が導かれてしまうが、将来S2Fがある閾値を超えると、それ以降は時価総額が上昇しない可能性もある。

また、このモデルはマイナーの「撤退行動」を考慮していない。

半減期後の1ブロック当たりの報酬が半減しマイニングの魅力が弱まることで、マイナーはBTCマイニングから撤退したり、代替的な通貨のマイニングを始める可能性もある(2020年の半減期ではBCHやBSVが先に迎える)。そうなった場合、BTCのネットワーク価値が低下し、BTC価格にも影響を及ぼす可能性がある。

さらに、このモデルはBTCの新規発行という「供給面」のみからの視点で分析を行う。実際にはBTCの価格形成は需要と供給の両面によって成り立つものであり、「需要面」も考慮に入れる必要があると言えるだろう。

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