ビットコインマイニング収益急落を耐え忍べるか 試される仮想通貨マイナーのサバイバル術

マイナー収益が大幅な下落と大手マイナーのサバイバル術

パンデミックとなった新型コロナウィルスによる世界経済への打撃が深刻化する中、他の金融資産との相関が低い安全資産としての可能性が期待されていたビットコインも、今年の最高値から50%以上の暴落に見舞われ、一時50万円台まで下落した。

仮想通貨相場は昨日から急反発しているものの、ブロックチェーンを支えるマイナーの収益は大きく下落している。 そのため、仮想通貨業界では、採算割れを起こしたマイナーが稼働を停止し、マイニンングから撤退するのではとの懸念が生じている。

マイニングの損益分岐点

マイニング収益は、マイニング機器の効率やマイニングの規模、また電気代の地域差などによって、その損益分岐点にも大きな差が生じる。以下はビットコインの損益分岐点に関する試算の例だが、現在のマイナーの平均損益分岐点は、1BTCあたり、70万円から80万円との見方が主流となっている。

投資コンサルタント「Capriole Investments」 :8000ドル

マイニングプール「f2pool」:Antminer S9の場合、7518ドル

仮想通貨リサーチ企業「TradeBlock」:Antminer s17+の場合、6851ドル

電気代が安価な国々のマイナーの場合(ベネズエラ等):4000ドル

つまり、今回の暴落で、マイナーの収益性が赤字に転落していることが推測でき、仮想通貨の根幹を支えるマイニング事業への懸念が高まってきている。

マイニング企業のリスク対策

しかし、マイナーを一括りにするのは早計だ。 ビットコインの誕生から11年を経て、幾度かの「仮想通貨の冬」を乗り越えてきたマイニング企業は、リスク対策も導入している。

その一つが、効率的にマイニングを行う専用施設、マイニングファームによる個人及び機関投資家向けのハッシュレート契約の販売だろう。 ハッシュレートの提供により得られた資金は、マイニングにかかる固定費をカバーし、また事業経営存続のためのキャッシュフローを生み出すことになる。

また、マイニングには欠かせない電力だが、ビットコインネットワークのマイニングに消費される電力源も、風力や太陽光、水力発電などの再生可能エネルギーへのシフトが進んでおり、現在その73%を占めるようになったとの報告もある。(Coinsharesレポート:2019年12月) 

このような再生可能エネルギーを利用した「持続可能なマイニング」を掲げ、費用効率が高い最先端のマイニング機器とマイニングプールを抱え、急速な成長を遂げているマイニング企業、Northern Bitcoin社の例もある。

 

また米ニューヨーク州の発電所が、費用の予測が容易で、安価な電力コストを武器に、マイニング事業に参入した例も報道された。

マイニング規模が大きく影響

しかし、大口のハッシュレート契約の販売による資金確保やマイニング施設及び最新機器への投資が可能なのは、ある程度の規模の企業に限られてしまうのも事実だろう。

マイニング企業へのコンサルティングを行うKristy-Leigh Minehan氏は、多くの大規模なマイニング企業は、今回のような仮想通貨価格の暴落時には、市場が回復するまでコインを貯め置く戦略をとると述べている。 さらに、ハードウェアのアップグレードによりマイニングの効率を高めることで、このような逆境を乗り越えようとしているという。 また、それが可能な資金力も備えていると考えられる。

一方で、小規模なマイニングプールにとって事態は厳しいものとなるだろう。採算が合わず、マイニング事業からの撤退や、大規模な企業への売却という選択を余儀なくされる可能性も高く、明暗が別れそうだ。

ただし、大手マイナーによるシェア拡大は、51%攻撃の可能性を高めるなど、ビットコインネットワークのセキュリティの面ではマイナスの要素も大きい。

新型コロナウィルスの感染拡大により、世界各国で、渡航禁止令や外出禁止令など厳しい措置が講じられると同時に、大規模な経済対策が次々に導入されている。 2008年の金融危機をきっかけに誕生したビットコインが、この試練をどう乗り越えるのか、まだ、先行きは見通せない。