- 米SECコミッショナー|技術革新は起こるに任せよう
- 「クリプトママ」との愛称で知られる米SECコミッショナーの一人、Hester Peirce氏はSECが仮想通貨とどのように折り合いをつけ、受け入れ態勢を築こうとしているかについて、自身の考えを表明した。
SECはもっと柔軟な姿勢で臨むべきだ
SECが仮想通貨とどのように折り合いをつけ、受け入れ態勢を築こうとしているか
「クリプトママ」との愛称で知られる米SEC(証券取引委員会)コミッショナーの一人、Hester Peirce氏が自身の考えを表明した。
機関投資家グレードの信頼される仮想通貨取引プラットフォームとして、正式ローンチを間近に控えたBaaktが、米シカゴで開催したデジタル資産会議での一幕である。
SECは、ビットコインETF承認等、アメリカにおける仮想通貨規制の要を握っているが、そのコミッショナーの一人であるPeirce氏は、「資本市場は人々の生活を大きく変革する力を持っている」との信念の下、よりオープンで柔軟な規制のあり方を訴えており、仮想通貨に対しても従来の規制をそのまま当てはめることに異議を唱えてきた経緯がある。
今回のインタビューでも、その姿勢は健在だ。
Peirce氏は、昨年10月に、ようやく仮想通貨関連分野を含むフィンテックを担当する部門として、イノベーションと金融テクノロジーの戦略的ハブである「FinHub」を新設することができたことを、SECにおける仮想通貨規制の一つの前進であると評価している。
しかし、同時に規制当局として保守的にならざるを得ないSECは、技術革新を受け入れるペースが非常に遅く、もどかしさを感じていると述べ、もっとオープンであるべきだと主張した。
SECは、もっと柔軟な姿勢で臨むべきだ。ただし、「SECが市場で商品の取引を許可したからと言って、我々が、投資家にそれがいい考えだと勧めているわけではない」という投資家への明確なメッセージだ。
このようにPeirce氏は「技術革新は自然に起こる事に任せよう。市場に商品をテストさせよう。SECより市場の方が、良い商品かどうかを解き明かすのに、ずっと適している」とSECが介入するべきではないとの見解を示した上で、SECに求められている役割は、投資家が賢い判断をするために有益な「情報の公開」であり、投資家のために投資の決断をすることではないと、自身が考えるSECが本来あるべき姿に言及した。
SEC側の一貫した答えを、起業家に提供する「技術革新オフィス」を創設するアイディアを可能性として提案したものの、周囲の反応は、あまり芳しいものではなかったようだ。新しいお役所仕事を増やすだけだとの意見も聞かれたという。
Bakkt側から、どのようにしてアメリカの規制に準拠しつつ、柔軟な仮想通貨規制の進んでいる他の国々に遅れを取らないようにしたらいいのかとの質問がなされると、Peirce氏は、「確かにすでに多くの規制が制定されている、アメリカとSECには有利な状況ではない」と答えた。
アメリカでは管轄する法域が重複したり、それぞれの管轄域で考え方が異なるなど、規制準拠が複雑化している現実を問題視し、イノベーターや起業家にとっては苛立たしい状況だろうと理解を示した。
デジタル資産のための「避難港」となるような規制の可能性も
そして、デジタル資産のための「避難港」となるような規制のあり方を模索できるかもしれないと述べる中で、そのためには、業界関係者からのインプットが大変重要な鍵となることを強調した。
また、なるべくプロジェクトの早い段階で、SECと話し合いを持つことの重要性も訴えている。
さらに先月、発表された金融取引業規制機構(FINRA)とSECの共同によるブローカーディーラーのカストディガイダンスについては、明確さに欠けるところがあり、実際がっかりしていると述べた上で、仮想通貨業界が答えを持っているのなら、知らせて欲しいと述べている。
一方、既存の規制の枠内で証券の提供と販売ができる「Regulation A」という登録要件の免除を利用し、仮想通貨の取引を可能にした例も引き合いに出し、小さいステップだが前進していることも付け加えた。
最後に、機関投資家へ向けてのアドバイスを求められると、一般投資家へのアドバイスと同じだと述べた上で、次のような点をあげた。
- 自分の投資の目的が何なのかを知ること
- 自分でしっかり調査すること
- 疑ってかかること
- 自分自身の決断をすること