【THE 事例集】製造業×ブロックチェーン – 自動車業界編 part.2

目次
  1. はじめに
  2. 自動車×ブロックチェーン
  3. 2.1事例: 自動車データの収益化

    2.2事例:交通渋滞の緩和

    2.3事例:走行距離メーターの改ざん対策

  4. 自動車部品メーカー×ブロックチェーン
  5. 3.1事例:車専用ウォレットを実装したペイメントサービス

    3.2事例:駐車場データの共有

  6. 最後に

はじめに

「製造業」という業界にスポットライトを当て、その中でどんな活用事例があるのか「THE 事例集」として掲載していきます。今回は自動車業界編のパート2になります。

自動車×ブロックチェーン

自動車業界におけるブロックチェーンの活用事例の続きを見ていきましょう。

▼パート1はこちら 【THE 事例集】製造業×ブロックチェーン – 自動車業界編 part.1

事例: 自動車データの収益化

最初にご紹介するのは、フォルクスワーゲングループに属しているドイツの自動車メーカーAudi(アウディ)のユースケースです。

Streamrというブロックチェーンベースのデータプラットフォームを利用し、Audi Q2という車種に搭載された通信”バス”から、位置情報、 燃料消費量、加速度などの情報を含むデータ情報をリアルタイムで収集しています。ユーザー(ドライバー)は、これらの情報を匿名で提示する代わりに対価を得る、という実証実験になります。

参考:(HPE)2019年のブロックチェーンの展望

上記の事例に近いもので、メルセデスベンツで知られるダイムラーの事例があります。

ダイムラー独自の仮想通貨mobiCOINを実装し、ドライバーの走行データを送信する代わりにmobiCOINを受け取る、という内容で、テスト段階で参加者は収集したmobiCOINでDTMレースのVIPチケット2枚、メルセデスカップ決勝のチケット、ベルリンファッションウィークの訪問など、さまざまな賞品を獲得することができたようです。

しかしながら、2018年の情報は出てくるのですが、2019年以降の進捗情報が無いため、テスト段階でストップしている可能性があります。

事例:交通渋滞の緩和

part.1でもいくつかフォードの事例をご紹介しましたが、今回は「交通渋滞の緩和」という切り口でのブロックチェーン利用になります。

フォードは、交通渋滞の原因の一つに各自の移動時間を重視するドライバーの心理が大きく関わっているとし、急いでいる車と余裕のある車がそれぞれ適切な対応を取ることで、交通渋滞が緩和されることを期待しています。

実装方法としては「協調性車間距離維持支援システム(CMMP – Cooperatively Managed Merge and Pass)」という特許出願の技術を利用し、 簡単に言うと「道を譲る行為」に対してトークンの受け渡しを行う、といった内容になっています。

一般車両間の取引や商用車とのトランザクションの検証と承認にCMMPトークンを利用し、交通整理のために自身の移動時間を犠牲になった車両がトークンを受け取る仕様になっています。詳しい内容については明らかにされていませんが、もしプロジェクトが継続しているのであればいずれ詳細情報も明らかになるでしょう。

今まで可視化されなかった「道を譲る行為」に対して定量的な価値を与える、トークンエコノミーでのブロックチェーン利用の事例です。

事例:走行距離メーターの改ざん対策

中古車の売買でよく問題に取り上げられるのが、走行距離メーターを改ざんして、高く売りつけるという詐欺です。これは決して珍しい話ではなく、国内外に渡って広く普及している不正方法です。

日本の場合、初回車検時から走行距離を記録して、それより走行距離が巻き戻ってないか毎回車検の時にチェックするのですが、初回車検時にメーターを巻き戻す、などの悪質な手段もあるそうです。国内ならまだしも、海外からくる中古車に対して、そのメーターが巻き戻っているかどうかは、何も知らない素人には判断が難しいです。

どのように計測したのかは分かりませんが、ドイツでは約3分の1の中古車のメーターが改ざんされており、これによる経済損失は年間約60億ユーロと試算されています。

この問題に対して、BMWとVeChain(ブロックチェーンスタートアップ)が共同で「VerifyCar」というアプリで、メーターの改ざん詐欺対策を考えています。

VerifyCarでは、走行距離メーターだけでなく、フィルターの交換、バッテリーの交換などの車内データと、保険金請求やサービスを受けた履歴など外部の情報を合わせて、 生データは安全なプライベートサーバーに保存します。それらをハッシュ値としてパブリックブロックチェーンに保存することで検証可能な状態にし、改ざんを防止します。

自動車部品メーカー×ブロックチェーン

事例:車専用ウォレットを実装したペイメントサービス

世界第3位の自動車部品製造会社であるZF FriedrichshafenとIBM、UBSの3社共同で「Car eWallet」というモビリティサービス用の最初のブロックチェーンベースの自動車取引プラットフォームを開発しました。

part.1で紹介したMOBIによる決済サービスと同類のサービスで、 高速道路の通行料、駐車場、電気料金をキャッシュレスで外出先で支払うことが可能になるようです。実装としては、IBM Blockchain Platform上のHyperledger Fabricで構築されています。

MOBIのケースと比べ、Car eWalletが先にスタートしていることもあり、プロジェクトでの実装進捗は先行しているようです。実際にどのように使われるのか、ハンズオンで試している動画も上がっています。

参考:ZF, UBS and IBM bring blockchain to in-vehicle payments

事例:駐車場データの共有

車両データの収益化は本記事でもご紹介しましたが、ご紹介するのは 「駐車場データの共有」という切り口のユースケースになります。

世界第4位の自動車部品製造会社コンチネンタル、オープンソースネットワークのCrossbar.io、HPEは共同で ブロックチェーンを活用した駐車場の情報共有プラットフォーム「Earn As You Drive」というアプリを立ち上げました。

「Earn As You Drive」 ではストレスのない駐車、”コネクティッドパーキング” を実現するために、ドライバーが事前に同意した場合にのみ、データを第三者に渡すことができます。ドライバーは、一般データ保護規則(GDPR)に従って、共有したい特定のデータを選択することが可能です。ドライバーはデータの共有の対価として仮想通貨を受け取り、駐車サービス代の支払いに利用できます。

参考: Earn money when you move out of a parking spot – Continental makes sharing vehicle data easy

最後に

今回ご紹介したユースケース以外でも、自動車業界のブロックチェーン活用の例はあります。車両データの共有に対して利用されているケースが多い印象ですが、そのデータの活用方法は様々です。

今後も新しい事例もどんどん出てくると思いますが、それらを含めてストックがたまり次第【THE 事例集】製造業×ブロックチェーン – 自動車業界編 part.3 – にて続きを公開する予定です。