Quorumのネットワークをスクラッチから構築してみる

目次
  1. はじめに
  2. 手順の全体
  3. Quorumの準備
  4. 3.1.Quorumのインストール

    3.2.Quorumのビルド

    3.3.Quorumのパスを通す

  5. Nodeの設定
  6. 4.1.Nodeの作業ディレクトリの作成

    4.2.Nodeの管理アカウントの作成

    4.3.Node Keyの作成

    4.4.static-nodes.jsonの作成

  7. ノードの起動
  8. 5.1.ノードの初期化

    5.2.ノードの起動

    5.3.ノードへの接続

  9. おわりに

はじめに

Quorumのネットワークの構築手順は公式サイトに乗っているのですが、手順を理解するにはEthereumの理解が別途必要となってきます。

この記事では簡単にですが各コマンドの説明を付けた上、Ethereumを学ぶ前でもQuorumのネットワークの構築を理解できるように配慮しました。

QuorumではRaft, IBFT, PoAの三種類のコンセンサスアルゴリズムが選べます。今回は一番簡単なRaftを利用して構築することにします。

この記事の内容を一通り学ぶことでQuorumのネットワークをスクラッチから作成できるようになります。

また、Quorumを起動してみるためのテンプレートプロジェクトも用意しておきました。とりあえず動かしてみたい方はこちらから。https://github.com/programmerkgit/quorum-gs

参照文献: Quorum公式ドキュメント

手順の全体

  1. Quorumの準備
  2. Nodeの設定を記述
  3. Nodeの起動と動作確認

Quorumの準備

Quorumのネットワークを構築するには、Quorumに対応したGethなどのツールをインストールする必要があります。

まずはQuorumをインストール・ビルドしましょう。

Quorumのインストール

git clone https://github.com/jpmorganchase/quorum.git

Quorumのビルド

$ cd quorum
$ make all

Quorumのパスを通す

Quorumを起動するスクリプトへのパスを通します。

 $ export PATH=$(pwd)/build/bin:$PATH

Nodeの設定

Nodeは、Quorumのネットワークに参加する一つのマシーンです。 Nodeを構築するためには、以下のものを作成します。

  1. Nodeの作業ディレクトリ
  2. Nodeを管理するアカウント
  3. ブロックチェーンの初期状態を記述するジェネシスファイル
  4. Nodeを識別するキー(nodekey)の作成
  5. ネットワークに参加するnodeの設定ファイルstatic-nodes.jsonの作成

それぞれの手順をみていきましょう。

Nodeの作業ディレクトリの作成

new-node-1という作業ディレクトリを作成しましょう。 このディレクトリにノードの情報が格納されることになります。

$ mkdir fromscratch
$ cd fromscratch
$ mkdir new-node-1

Nodeの管理アカウントの作成

以下のコマンドでNodeが所有するアカウントを作成します。

パスフレーズの入力を求められるので、任意のパスフレーズを入力してください。このパスフレーズは重要なので保存して無くさないようにしてください。

$ geth --datadir new-node-1 account new
INFO [12-18|14:51:17.224] Maximum peer count                       ETH=25 LES=0 total=25
Your new account is locked with a password. Please give a password. Do not forget this password.
Passphrase: 
Repeat passphrase: 
Address: {0431a975ebfade62caaa86d3a38eb087837ee222}

以下のコマンドでアカウントが作成されたことを確認しましょう。

$ ls new-node-1/keystore/
UTC--2019-12-18T05-51-19.943010000Z--0431a975ebfade62caaa86d3a38eb087837ee222

このコマンドで表示された数字列(上の例では0431a…)の部分はアカウントは管理アカウントのアドレスで、後に利用します。

$ touch genesis.json

以下のgenesis.jsonファイルをコピペし、アドレス部分を書き換えてください。 allocキーはアカウントの初期残高を設定します。

{
  "alloc": {    
    // 0xから実際のアドレスで置き換える
    "0x0431a975ebfade62caaa86d3a38eb087837ee222": {
      "balance": "1000000000000000000000000000"
    }   
},
 "coinbase": "0x0000000000000000000000000000000000000000",
 "config": {
   "homesteadBlock": 0,
   "byzantiumBlock": 0,
   "chainId": 10,
   "eip150Block": 0,
   "eip155Block": 0,
   "eip150Hash": "0x0000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000",
   "eip158Block": 0,
   "isQuorum": true
  },
 "difficulty": "0x0",
 "extraData": "0x0000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000",
 "gasLimit": "0xE0000000",
 "mixhash": "0x00000000000000000000000000000000000000647572616c65787365646c6578",
 "nonce": "0x0",
 "parentHash": "0x0000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000",
 "timestamp": "0x00"
}

Node Keyの作成

Node Keyとは、ノードを識別するためのキーで、IDとして利用されます。

bootnodeコマンドを利用してNode Keyを作成しましょう。 作成した鍵は作業ディレクトリにも保存します。

$ bootnode --genkey=nodekey
$ cp nodekey new-node-1/  

以下のコマンドで、NodeのIDを確認してみましょう。

$ bootnode --nodekey=new-node-1/nodekey --writeaddress > new-node-1/enode
$ cat new-node-1/enode
77822727e5b6254c7061e03846250e1ffdbe6f0be1f9f849a1756ff7dc8264455dcce504f7bb42c5d7a12bc940a32890e031c4e719ee5f2bd3347d27015edb22

ここで、enodeというのは”ethereum node”の略で、表示されるのはenodeのIDとなるアドレスになります。

static-nodes.jsonの作成

static-nodes.jsonはプライベートネットワークに初期に参加しているノードの一覧を記述するファイルです。 ここに記述されていないノードは別途コマンドによってネットワークに追加する必要があります。 今回はノードは自分のノード一つだけなので、自分の設定を記述します。

まずはstatic-node.jsonファイルを作成しましょう。

$ vim static-nodes.json
... 以下の中身でファイルを作成してください。
[
  // @マークの手前までの778....edb22の部分を実際のアドレスで置き換える
  "enode://77822727e5b6254c7061e03846250e1ffdbe6f0be1f9f849a1756ff7dc8264455dcce504f7bb42c5d7a12bc940a32890e031c4e719ee5f2bd3347d27015edb22@127.0.0.1:21000?discport=0&raftport=50000"
] 

次に、作業ディレクトリにファイルをコピーします。

$ cp static-nodes.json new-node-1

これでノードの起動の準備が整いました。

ノードの起動

これまでの手順で作成した設定を元に、ノードを起動します。 *注意 一度コンソールを閉じるなどによりPathが通っていないと失敗します。失敗する場合はもう一度quorumディレクトリでexport PATH=$(pwd)/build/bin:$PATHを実行してください。

ノードの初期化

まずはノードの設定を元に初期化します。

$ geth --datadir new-node-1 init genesis.json

ノードの起動

Nodeの起動スクリプトを記述します。

$ vim startnode1.sh
... 以下の内容でファイルを記述してください。 
#!/bin/bash
PRIVATE_CONFIG=ignore nohup geth --datadir new-node-1 --nodiscover --verbosity 5 --networkid 31337 --raft --raftport 50000 --rpc --rpcaddr 0.0.0.0 --rpcport 22000 --rpcapi admin,db,eth,debug,miner,net,shh,txpool,personal,web3,quorum,raft --emitcheckpoints --port 21000 >> node.log 2>&1 &

起動スクリプトを実行できる状態にし、実行します。

$ chmod +x startnode1.sh 
$ ./startnode1.sh

これでノードの起動が完了です。

ノードへの接続

ノードが起動したのでネットワークに接続してみましょう。 gethを利用し、以下のコマンドでネットワークに接続できます。

$ geth attach new-node-1/geth.ipc
Welcome to the Geth JavaScript console!

instance: Geth/v1.8.18-stable-b1f3b96e(quorum-v2.4.0)/darwin-amd64/go1.13
coinbase: 0x0431a975ebfade62caaa86d3a38eb087837ee222
at block: 0 (Thu, 01 Jan 1970 09:00:00 JST)
 datadir: /Users/admin/WebstormProjects/quorum-gs/quorum/fromscratch/new-node-1
 modules: admin:1.0 debug:1.0 eth:1.0 ethash:1.0 miner:1.0 net:1.0 personal:1.0 raft:1.0 rpc:1.0 txpool:1.0 web3:1.0

コマンドを実行し、状態を確認してみましょう.

> raft.cluster

[{
    hostname: "127.0.0.1",
    nodeId: "77822727e5b6254c7061e03846250e1ffdbe6f0be1f9f849a1756ff7dc8264455dcce504f7bb42c5d7a12bc940a32890e031c4e719ee5f2bd3347d27015edb22",
    p2pPort: 21000,
    raftId: 1,
    raftPort: 50000,
    role: "minter"
}]
> 

おわりに

以上がQuorumのネットワークの構築手順でした。

Quorumを本番利用するには複数ノードでネットワークを構築する必要があります。 その場合には別のPCなどでノードを構築し、設定ファイルを共有し、お互いにネットワークを接続できる状態にするなどの設定が必要です。

このような面倒な設定を数分でできるようにしているのがAzure Blockchain ServiceなどのBaaSです。

Azure Blockchain Serviceについても紹介しているので、是非参考にしてみてください。

▼Azure Blockchain Serviceについてはこちら Azure Blockchain Serviceにおけるブロックチェーン アプリ開発手法