- ビットコインETF非承認の真の理由とは
- 米SECが「ビットコインETF」を否決したことに伴い、申請企業のBitwise社が分析結果を公表、背景にテザー問題があると解説した。
ビットコインETF非承認の真の理由とは
本日、米SECは最後の単一指数に連動するビットコインETFの申請を非承認した。この申請が非承認となったことで、SEC申請中のビットコインETFに対する可能性は絶たれた。
申請企業のBitwise社は、SECの判断について、自社SNSアカウントで懸念点を自己分析した。
Bitwise社は、判断期限の前に、自主的に申請を取り下げたVanEck社と異なり、申請の取り下げを行わなかった。「我々は取り下げることもできたが、あえてしなかったのは、申請プロセスそのものが生産的であるからだ。」と説明した。
Bitwiseは、以下3つの反省点を顧みた。
非承認に至った問題点
以前より指摘されるように、却下された理由は、概ね市場操縦と監査問題にあるという。「我々は、過去2年間に仮想通貨市場の成長を楽観視してきたが、今後はより多くの工夫が求められる。」と述べ、SECの判断に対しては、「厳しい指摘だが、ありがたいフィードバックだ。」とその内容を認めている。
具体的にどの部分が「市場操縦と監査問題」に該当するか、SECの120ページ以上の判断文書を見ると、次のような発見があったという。
テザー(USDT)による市場操作疑惑
BitwiseのETFは、本来いわゆる「本物の出来高を記録する10の取引所」であるBinance、Bitfinex、Coinbase Pro、Kraken、Bitstamp, bitFlyer、Gemini、itBit、Bittrex、Poloniexから平均したBTC価格を連動指数の参考価格にする予定だったが、申請プロセスの途中、テザーUSDTをめぐる裁判でBitfinexを参考価格取引所リストから取り外した経緯がある。
しかしSECはの見立てでは、Bitfienxを外しただけでは、ビットコイン市場が価格操縦の影響を受けないという主張は十分ではないと見ていた節があり、「BitwiseがBitfinexをリストから除外したのは、その場凌ぎに過ぎず、価格操縦の防止策としては不十分だ。」と指摘。「Bitfinexが今後、不正にステーブルコインを発行する可能性が低い」というBitwiseの主張は説得力がないと不信感を示した。
さらには、「過去にステーブルコイン不正に対する裁判がもたらす抑止力が、将来の状況に適用するとは信じがたい」と説明。ETF商品でBitfinex価格を参照せずとも、USDTによるビットコイン市場への影響は払拭できないというのが、SECの現在の観点だ。
この文書では、Bitfinexの資金隠蔽疑惑裁判も取り上げており、テザーによる市場影響を含む相場操縦疑惑は、SECにとっての最大の懸念点となっている。
米仮想通貨弁護士Jake Chervinsky氏は、「SECが非承認判断を下すだけでなく、ビットコインの市場構造を告発するような文書を発表するのは非常に珍しい。」とコメントした。
そして今後ETFの道のりについて、「現在、Jay Clayton長官が率いるSECはビットコインETFを承認しない方針と考えるのは合理的だ。通常は非承認のあとにすぐ再申請するが、今回ばかりは1年ほどを開けるかもしれない。Clayton氏の任期は2021年の6月だが、さらに18ヶ月の任期が延長される可能性も考えられる。」と、ETFを期待しないことを勧めている格好だ。
At this point, it's reasonable to assume that Jay Clayton's SEC will never approve a bitcoin ETF.
— Jake Chervinsky (@jchervinsky) October 10, 2019
His term ends on June 5, 2021, but could go another 18 months longer.
Usually we'd see new ETF proposals filed immediately after rejection, but it might be time to take a year off.
SECのフィードバックは有意義
上述したように、SECはビットコイン市場を根本的に疑っている。しかしBitwiseはSECのフィードバックと批判が非常に有意義だと捉えている。
「SECが指摘した問題点は、我々が今後解決するべき点であり、SECが指摘したからこと、具体的な問題がはっきりと判明している。」と前向きな見解を示した。通常でも、ゴールドや債権のETF商品も数年ほどかかって漸く承認されたため、道のりは長いだろうとしている。
今後Bitwiseの取り組み
Bitwiseの非承認ですべての単一ビットコインETFの申請は消滅したが、Bitwiseは今後もSECとの対話を重ね、データ分析などの分野で業界の透明度を改善していく方針を示し、「タイミングを見て、再び申請を行う。」と明確にした。
現在残っているETF関連商品はWilshire Phoenix社のビットコインETFだ。このETFはVanEckやBitwiseが提案する単一指数に連動するものと異なり、米国債を含めたバスケット型ETFで、先日よりSECが審査を開始している。
参考:Bitwiseの返答
参考:SECの判断