オープンソース版リブラとは?その狙いについて解説

イーサリアムの開発者カンファレンス、DEVCONで発表されたOpen Libraについて、大石が解説します。

Open Libra概要

Open Libraとは、Facebookが主導するのではなく、Libraをフォークしてホントのオープンソースでやろうぜ!というプロジェクトです。

すでに開発のレポジトリが出来ており、開発されています。

Open Libraは、Libraのスマートコントラクト(Move言語)の仕様をそのまま移植して、エンジンをCosmos-SDK(tendermint)ベースにしたものです。逆の言い方をすると、Cosmos-SDKの上に、Move言語を移植したものといえます。

このため、Movemintという名称になるようです。

(同様のものとして、Ethermintというのがあります。これは、Cosmos-sdkの上に、イーサリアムのSolidity言語を移植したものです。現在開発中)

Open libraですが、

“Anything running on Facebook’s Libra, you can just drag and drop to OpenLibra. Finances will work the same. The code will work the same,” Geiger told CoinDesk.

「Facebookのリブラの上で動くものであれば、なんだってドラックアンドドロップ、コピペで、Open Libraの上でも動くよ。おんなじコードが動くんだ」

といっています。

リブラの上で開発されたコントラクトや、アプリケーションのコードをそのまま持ってくれば、Open Libraの上でもそのまま動くということです。

となると、開発者としては、別にFBのLibraじゃなくても、なんでも動けばいいじゃんということにもなります。

Open Libraの狙い

FB版Libraは、バリデータは資本を提供したVISAやUberなどを始めとする100社のパートナー企業が行うことになっています。Open Libraの場合は、バリデータはパブリックです。なりたい人がなれます。(ただし上位100位に相当するコインのステークが必要)

どちらのネットワークのほうが強固と考えるかは人それぞれですが、大企業が保証しているほうが強固とみるか、パブリックなほうが検閲に強いと見るか、そのあたりは選択できるというわけです。なにしろ同じコードが動くのですから。

ただし、Open Libraの場合は、コインそれ自体は発行しないようです。FBが発行したLibraにペグする形で、Open LibraのLibraは発行されるとしています。つまり、Open Libraは純粋にスマコンの処理をするけど、価値の発行自体は行わないということです。

FBのLibraは、最近は、想像どおりに政府との軋轢が顕著になり、そう簡単にはローンチしそうにない雰囲気が醸しだされています。下手をするとこのまま頓挫してしまうのではないかと思います。

躓いているのは価値の発行のところであって、そこが集中的に軋轢になっています。

Open Libraの狙いは、価値の発行の部分は本家Libraにまかせておいて、スマコンの実行に関してはオープンなものの代替を提供するということだと理解しています。

これは前から言っている私見なのですが、Libraは、価値の発行と、チェーンの運営を分けたほうがうまくいくと思います。

FBは、法定通貨ペグの管理と、コインの発行に特化して、Libra自体はいろんなチェーンで発行してしまえばいいと思います。ERC20版もあってもいいし、Cosmos版があってもよい。そちらのほうが便利になるはずです。

そもそもLibraというのは、価値の発行の話と、Move言語という新しいスマコンチェーンという2つのものが一緒になってしまっています。

これを切り分けて、FBと企業連合は価値の発行に特化して、Move言語のチェーンは、オープンソースとして開放するのがスムーズにいく道ではないでしょうか? そしてOpen Libraは、その後者のMove言語のチェーンの部分を、勝手にフォークして開放してしまったものだと言えます。

インターチェーン機能について

Open Libraですが、Cosmoso-SDKベースですので、インターチェーン機能があります。つまり、Cosmos-Hub経由で、他のチェーンと相互接続することができ、このチェーンに、BTCや、ETH、BNBなどをペグして導入することができるようになります。

BTC(Open Libra版)、BNB(Open Libra版)などが出現し、それがMove言語のスマコンで処理することができる。

こうなると、前から私が予言しているように、インターチェーン時代においては、「価値の発行と、スマコンの処理」というのは分離する、別のものになるということです。

逆の言い方をすると、スマコンのチェーンといのはいくらでもコピーやフォークが可能なので、チェーン自体が価値の源泉の主体ではなくなっちゃうということです。(もちろん価値の一部を形成はしますが)。

それよりも、外部からペグする形で、すでに価値のあるもの(BTCや、ステーブルコイン)などを導入し、スマコンチェーンで「処理」を行うという使い方になっていくのではないでしょうか。スマコンチェーンのアプリ化ということだと思います。

こうした変化が、Open Libraの一件をみても読み取れるのではないかというのが結論です。

関連記事はこちら
いよいよリブラ協会が始動し、今後もリブラの開発状況に世界中から注目が集まりそうです。そのリブラ協会が担うように、仮想通貨の実用化にはValidationの形成が非常に重要になってきます。前回のコラムではステーキングによるノードのアップデートがどのように行われるのか、実例を交えて紹介しました。本コラムとのつながりもありますので、ぜひご覧ください。 ステーキングサービス会社から視たCosmos Validatorの裏側

大石哲之 ブロガー、エンジェル投資家

2013年にビットコインに出会ってから、フルタイムの暗号通貨ブロガーとして活躍。日本を代表的する暗号通貨ブログ(doublehash.me)を執筆。

ビットコインの仕組みやイーサリアムを初めて日本で一般向けに紹介したほか、Ethereumにイーサリアムと訳語をつけ、定着させた。ICOの概念を日本で初めて紹介し、最初期のICO(Factom、Augur)などのアドバイザーを務めた。エンジェル投資家として、日本・海外のスタートアップに参画している。

1975年東京生まれ。慶応義塾大学でコンピュータサイエンスを専攻、アクセンチュアのコンサルタント、インターネットリクルーティング会社の創業などをへて現職。