香港の仮想通貨ファンドライセンス
香港政府は昨年、仮想通貨ファンドに対する正規ライセンスを与える計画を発表したが、これまでのところ、承認されたファンドはほぼ存在していないことが明らかになった。ロイターが報じた。
香港証券先物委員会(SFC)は、昨年10月に仮想通貨ファンドに公的ライセンスを与える計画を、規制ガイダンスと共に発表した。
公的にガイダンスが文書化されたのは、今年10月になってからである。ファンドマネージャーが最低300万香港ドル(約4000万円)の流動資本を維持することや機能的に独立したカストディアンを任命することが要件として含まれている。
現状では、このライセンスを取得することはハードルが高いとみられる。
現時点で、ライセンスを取得できた稀な企業として特定することができるのは、香港を本拠地とする仮想通貨コンサルティングファームのDiginex社のみという。
SFCへの申請を支援した法律事務所のSimmons&Simmonsはロイターのインタビューに答えて、まだ業界が熟していないことも一因だと示唆している。
この分野の新しいマネージャーの多くは、仮想通貨事業を行うための背景や経験、あるいは支援者を持っていない。よって、申請をそもそも開始することさえできない状況だ。
ライセンス取得のハードル
ライセンスを取得する際の厳格な基準と広範な規制枠組みを回避して、香港の仮想通貨ファンドの幾つかはオフショアへ向かったという声もあるが、他にも要因は考えられる。
規制自体ではなく、仮想通貨ファンドにとってカストディ、監査、サイバーセキュリティなど、一連の必要とされるシステムを構築すること自体がハードルになっているという意見もある。
香港の著名法律事務所「Clifford Chance」のパートナーである、Rocky Mui氏も「規制当局が障害になっているというよりは、運用上の問題や、インフラストラクチャーを構築すること自体がハードルになっていると思う」と意見した。
さらに、ライセンス取得企業の少なさの理由としては、仮想通貨のボラティリティの高さや、「仮想通貨の冬」とも呼ばれた昨年の低調相場が、申請を躊躇わせていたことも挙げつつ、Rocky Mui氏は「機関投資家が市場に参入するにつれて、仮想通貨ファンドは、お蔵入りにしていたライセンス書類一式を、再び取り出してきて申請準備し、完全に規制対応した運用をしようとするのではないか」ともポジティブに予想した。
参考:ロイター報道