仮想通貨業界の監視強化を示唆
米国のJustin Muzinich財務副長官は21日、ニューヨークで開かれた銀行業及び決済業向けのTCH+BPI年次総会で、仮想通貨プロジェクトは「他の革新技術の流れとは異なり、民間セクターのみならず、政府が責任を担う多くの活動にも影響がある」と指摘し、財務省としてもその動向を注視していることを明らかにした。
基調講演の中でMuzinich副長官は、財務省が懸念を抱いている分野として国家安全保障問題を挙げ、仮想通貨が税制管理、マネーロンダリング防止(AML)、およびテロ活動への資金供与対策の面で法的枠組みを回避するために使用される可能性を指摘した。米国の既存の法律が仮想通貨取引に適用されることは明白なものの、匿名での取引を許容する仮想通貨の普及規模が拡大すると、犯罪防止のための法の執行が困難になると、副長官は強調した。
また、仮想通貨が民間セクターでAML法に準拠していることが保証されたとしても、政府としては、マネタリーベース、金融の安定性およびユーザー保護の観点からは依然として重大な懸念が残るとした。
仮想通貨のガバナンス
さらに、長期的な懸念材料として仮想通貨のガバナンスを問題視
歴史的に国内流通通貨の90%が民間発行であった時期(1830年代)を経て、現在、米国では連邦準備金制度が金融・通貨システムの基盤となり、そのガバナンスには民主的プロセスが規定されている。
しかし、仮に仮想通貨が規制問題を全てクリアし、普及が進んだ場合、通貨管理のルールを変更するプロセスは、一体どのようなものになるのかと、次のような問いをMuzinich副長官は投げかけた。(「ステーブルコインの担保率または担保となる準備通貨の組み合わせを変更したい場合」を想定)
- 民間の管理団体が行うのか?
- コイン所有者の多数派の意見によるのか?
- 外国籍の所有者が多数派になった場合は?
以上のような例を挙げて、「我々の経済システムに関する重要な決定は、国民に説明責任のある代表者の手から奪われただろうか」と問いかけている。Muzinich副長官は、明言は避けたものの、仮想通貨リブラが念頭にあることは容易に推測されるだろう。
Muzinich副長官は、財務省は「イノベーションを重視し、効率の向上を歓迎する」としながらも、民間発行の仮想通貨は単なる支払い手段にとどまらず、「政府が伝統的に担ってきた機能の一部を民間部門に移行する可能性」があるとして、仮想通貨業界へ対し、次のように警告して講演の結びとした。
公共の利益を追求のため、政策立案者がこのような問題に非常に厳しい目を向けることを、デジタル通貨市場に携わる人々は予期すべきだ。