仮想通貨市場、最新の機関投資家動向 リスク要因と成長要因は?=バイナンス調査部門

仮想通貨市場、最新の機関投資家動向

仮想通貨取引所最大手のバイナンスが、機関投資家および大口顧客を対象としたアンケートの調査結果を分析したレポートを発表した。 このレポートは7月に発表されたレポートに続くもので、10月に実施された調査結果に基づき、機関投資家の類型と見解を分析したものだ。

英語および中国語で行われたアンケートでは、対象となった100以上のクライアントのうち、76のクライアントから有効な回答が得られたが、その構成は、10万ドルから2500万ドル(約1085万円~27億1500万円)を仮想通貨投資へ割り当てている企業やファンド等の機関投資家となっている。

前回のアンケートに回答を寄せた41の機関よりもサンプル数は85%増加したものの、機関投資市場全体の傾向として捉えるには小さすぎる調査サンプルサイズであることから、一般化は避けるようにと注意を促している。

回答したクライアントの類型

回答者は投資ポートフォリオを管理する立場にあるが、職種の形態は独立したトレーダーから、専業取引会社や投資ファンド、仮想通貨プロジェクトチーム、OTC仲介会社、またセルサイドの金融機関など多様。 その大半が株式、通貨、債券商品、不動産、金を含むコモディティ等の幅広い資産クラスにも投資している一方で、80%以上を暗号資産に割り当てて投資するクライアントも35%を占めた。

  • 伝統的投資市場での投資経験年数:1年~3年:33%、4年~6年:20%、7年以上:27%
  • 仮想通貨市場での投資経験年数:1~3年が58%で最多数を占める一方、4年以上の経験者も37%存在する

ステーブルコインの使用

ステーブルコインの使用について、69のクライアントが寄せた回答をまとめたのが下のグラフだ。

もっとも多く使用されているのはUSDT(テザー)で、40.25%となっている。

依然として、テザー社を取り巻く疑惑に関する法的問題がくすぶり続けているにも関わらず、その流動性と時価総額の大きさから、他のステーブルコインを大きく引き離しトップに立った。続いて、コインベースとサークルが発行するUSDC、またTUSD、PAXがよく使用されているようだ。

アンケートの使用言語別に見ると、中国語回答者の半数以上がUSDTを使用し、USDC使用は12.2%に留まったのに対し、英語回答者の約4分の1はUSDCを使用すると回答したという。

また、使用するステーブルコインの選択は、それぞれの時価総額ランキングとほぼ一致しているため(下グラフ参照)、バイナンスは、ステーブルコインの使用とその時価総額には正の相関関係があると結論づけている。

カストディ

機関投資家の参入を促すために重要な要素として認識されているカストディの面だが、バイナンスを利用するクライアント間では、取引所が依然として他の選択肢を大きく引き離し、92.1%で1位となっていることが興味深い。

仮想通貨をセルフストレージへと移す場合、安全性と制御面の向上に伴い、コールドウォレットが第2位(32.9%)の選択肢となった一方で、独立した第三者が提供するカストディサービスの利用は2.6%に留まっている。

仮想通貨業界のリスクと業界の成長要因

仮想通貨業界に関するリスクと成長要因に対する認識ついては次のような結果が出た。

最大のリスク(回答数60に基づく)

1位 48.3%: プラットフォーム固有の障害(取引所のハッキングなど)

2位 43.3%: 進行中のテザー社(Tether)に関する法的問題

3位 38.3% : グローバルレベルでの規制の不確実性

4位 30.0% : 個人投資家のアルトコインに対する関心の欠如

5位 21.7%: 国内の規制の変更

一方、次のような要素はリスクが低いと認識されたようだ。

最低のリスク(回答数60に基づく)

1位 0.0%:プライバシー

2位 5.0%:リブラ

2位 5.0%:中央銀行発行のデジタル通貨(CBDC)

4位 8.33%:スケーラビリティ問題

5位 10.0%:個人の安全性問題(フィッシング、SIMカードすり替え詐欺等)

業界の成長を促す要因としては、次のように認識が明らかになった。

成長を促進する要因(回答数60に基づく)

1位 44.3%:国際的および国内規制の変更

2位 34.4%:伝統的な証券会社による仮想通貨サービスの提供(E-Trade、Fidelityなど)

3位 27.9%:オプション契約およびその他デリバティブの開発

3位 27.9%:ビットコインETF

5位 19.7%:フェイスブックのリブラプロジェクト

5位 19.7%:中央銀行発行のデジタル通貨(CBDC)

仮想通貨業界の成長を促す要因として、規制の明確化が44.3%でトップとなったが、これは前回6月の調査結果とも一致しており、規制問題は、仮想通貨業界の将来にとって最も大きなリスクであり、かつ潜在的な成長促進要因であるとの認識が改めて浮き彫りになった形だ。

また、リブラとCBDCに関しては、リスクではなく成長を促進するものと捉えられていることも興味深い。