仮想通貨「テザー裁判」で食い違う主張、裏付け資産の真相究明へ

米連邦裁判所がBitfinexへ召喚状を発布

疑惑が指摘されるテザー問題を巡り、大きな進展が見られた。

米連邦裁判所は17日、Bitfinexに対して、Crypto Capital社への召喚状の発布を許可した。Crypto Capital社はテザーの準備金を管理していた企業の一社で、テザーの不正融資問題を巡り、預託金8.8億ドルが凍結されたと主張されていた裏付け資産の預け入れ先企業だ。

召喚状が発布されたことにより、BitfinexはCrypto Capitalに対して、事実証言や書類提出を命じることが可能になり、凍結された資金の追跡にも繋がるほか、凍結されていたテザー(USDT)の準備金の一部である8.8億ドルを回収できる可能性も高まった格好だ。

この預託金の凍結は、係争状態にあった、米NY司法当局(NYAG)とテザー社の言い分に食い違いが発生していたポイントでもある。その根拠を裏付ける情報が開示されれば、白黒はっきりすることになる。

なお、Bitfinexの法律顧問を務めるStuart Hoegner氏は今回の裁判所の決定について、「裁判所が我々の申し出を受け入れてくれたことを嬉しく思うとともに、グローバルでの信頼回復に向け、情報や資産の収集に取り組んでいきたい」とコメントしている。

テザーの裏付け資産と凍結の問題点

Crypto CapitalとBitfinexは、テザーの準備金の預託先としてビジネスパートナーであったが、状況は複雑だ。

前述したように、預託資産の一部を預けている先であることの他に、この預託資産凍結の有無がテザーの不正融資問題にも絡んでいるためである。

まず、Crypto Capitalの共同経営者を務めるaka Oz Joseph(Yosef)被告は現在、銀行詐欺・銀行詐欺の共謀・無許可(資金移動業のライセンスを取得せず)で事業運営を行った疑いの三つの罪で起訴されている。

この犯罪捜査では、米捜査当局を含む複数の海外機関も調査チームに参画しており、捜査当局の調査の関係でCrypto Capitalの資産が凍結、その一部にはBitfinexの預け入れ資金も含まれていたと報告された。

過去にYosef被告が起訴されたことで、凍結された資産がBitfinexへ返金されるのではないかとの見方も出ていたが、資金回収の目処は立っていない。今回裁判所から召喚状が発布されたことで、凍結資金の回収に向けて前進したことは間違いないだろう。

裁判との関連性

一方、今回のCrypto Capitalの問題、テザー社の不正融資問題解決を左右する重要進展でもある。

2019年4月、テザー社は仮想通貨USDTの準備金の一部を不正利用し、親会社であるBitfinexに融資を行なったとして、ニューヨーク司法当局に告訴。Bitfinex側は陳述書を通じて、Crypto Capitalへの捜査の影響で、資産が凍結されていたことが要因にあるとする弁明を繰り返していた。

仮にCrypto Capitalへの文書開示の請求などで、資産が凍結されていたことが証明できれば、準備金の不正利用に関して身の潔白を証明する糸口にもなる可能がある一方で、開示情報とテザー社の主張に相違点が見られた場合、テザー社の疑惑を強めることになる。

注意点

本件について、資金回収に向けて一歩前進したとテザーやBitfinex側は見ているようだが、Crypto Capital社からの資金回収ができた場合も、テザー発行の裏付け資産の一部にしか相当しない点には留意したい。

テザー問題の一連の経緯

  • 4/25:NYAGがBitfinexに対し、USDT準備金の不正利用として、NY州における営業の停止を求める
  • Bitfinexは、この指摘を全面否定
  • 5/3:NYAGがBitfinexに対し、財務書類の開示要求
  • 最高裁がテザー社とBitfinexに対し一時的な準備金の移動禁止を発令
  • 5/16:証拠不十分として、最高裁がその禁止を一部解除; Bitfinexが告訴の取り消しを求める
  • 5/18:Bitfinexがアクセス不可能となった資金を補うため、LEOトークンのセールを行い、約1100億円を調達成功
  • 6/2:Bitfinexがテザー社に対し、1億ドルを返済した
  • 7/8:NYAGは、Bitfinexとテザーが2015年よりNY住民に提供をしていたとして、最高裁にその管轄権を主張する摘要書(Memorandum of Law)を提出
  • 7/22:BitfinexがNYAGの主張(摘要書)に対するリスポンス(書面上の返答)を行う
  • 7/29:最高裁が、Bitfinexの告訴取り消しの動議を審議する聴取を実施
  • 8/20:裁判所がNYAGの管轄権を認める。資金の不正利用疑惑に関する書類開示が必要に
  • 8/20:Bitfinex側が、米ニューヨーク最高裁(=第一審裁判所)の撤回を求め上訴(書類提出)
  • 9/24:Bitfinex側が上訴。書類を引き渡す必要がないと判断
  • 10/3:NYAGは再び、資金不正利用に関連する有効な書類を作成うよう申し立てる
  • 10/8:Bitfinex社らは、USDTの発行で仮想通貨の相場を操縦していたとして集団訴訟を起こされる
  • 10/9:新たなレターを提出、NYAGが要求する書類作成を拒否
  • 10/11:裁判所は、Bitfinexらが財務書類を提出不要と判断
  • 11/8:テザー社はUSDTが100%の裏付け資産を持つと説明
  • 12/4:検事当局がBitfinexの準備金のIOUによる埋め合わせが詐欺容疑に当たると主張

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