米下院議員、「2020年仮想通貨法」の改訂草案を米議会に提出

仮想通貨規制の前進となるか

昨年12月に米連邦議会に提出された「2020年仮想通貨法」の討議草案が改訂され、3月9日に再度提出された。 未だ包括的な仮想通貨規制が確立していないアメリカで、枠組み作りの第一歩となるか注目される。

共和党のポール・ゴサール(Paul Gosar)下院議員が提出したこの法案は、仮想通貨(デジタル資産)を特徴ごとに分類し、管轄する規制当局を明確に定めようというもの。 仮想通貨を三つのカテゴリーに分けて定義し、それぞれを担当する規制当局を特定する。

仮想通貨の三つのカテゴリーと担当規制当局

法案では仮想通貨を、「暗号コモディティ」「暗号通貨」「暗号証券」の三つに分類し、それぞれ、商品先物取引委員会(CFTC)、財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)、そして証券取引員会(SEC)を管轄当局と定めている。

法案による分類された仮想通貨の定義は次の通り:

1.暗号コモデティ(Crypto-Comodity) : CFTC管轄

デリバティブを含む、分散暗号台帳やブロックチェーン上の経済的な商品やサービスで、実質的または完全な代替性をもつ。 市場はこの商品・サービスの提供者を意識することはない。

2. 暗号通貨(crypto-currency):FinCEN管轄

分散暗号台帳やブロックチェーン上の米国通貨、もしくは合成デリバティブで、銀行口座の担保に裏付けられたステーブルコインや、オラクル・スマートコントラクトによって定義された合成デリバティブ。 暗号コモデティやその他の暗号通貨もしくは暗号証券を担保として保証される。

3. 暗号証券(crypto-security):SEC管轄

分散暗号台帳やブロックチェーン上にある株式や負債が該当するが、一部の合成デリバティブなどの例外も定められている。

法案が定義する暗号通貨

上記の定義にあるように、この法案では「暗号通貨」とは、テザー(USDT)やUSDコイン(USDC)などのようなステーブルコインを指しているようだ。一方、ビットコインは「商品・サービスの提供者を意識しない」代替性を持つと定義された、暗号コモデティに該当するように思われる。

「主要な」規制当局と取引所登録の義務付け

改訂草案では、CFTCとFinCEN、SECをそれぞれ三つのカテゴリーを管轄する「主要な」規制当局として特定している。 つまり「主要な」という表現によって、規制の権限を持つ機関の区分を一つに限定することを避け、柔軟性を持たせた形になった。 

さらに、仮想通貨取引所は、それぞれが扱う仮想通貨のカテゴリーに従って、該当する規制当局に登録することが求められる。 登録した取引所リストは公開される。 一方、規制当局には、該当する仮想通貨を作成、または取引するために必要なライセンス、認定、または登録に関するリストを公開し、更新しておくことが課せられる。

法律アナリストからは厳しい批判

12月に提案された最初の討議草案は、各規制当局の実際の権限と法的根拠などの理解が足りないとの厳しい批判に晒された。 中でもFinCENは通貨自体を規制しているのではなく、それを取り扱う金融機関等を規制しているため、FinCENが通貨を規制するためには既存の法律の大掛かりな修正が必要になると指摘された。

昨年4月に提案された「トークン分類法」も、仮想通貨規制の枠組みを明確化しようとする試みだが、米仮想通貨業界関係者は、この法案の審議が「失速したと感じている」と述べている。

余談になるが、2020年仮想通貨法を提案したゴサール議員は、2月下旬の共和党保守派の会合でコロナウィルス感染者との接触したとして、自主隔離を表明している。