暗号資産市場の価格-流通量に基づくHerfindahl-Hirschman指数等の諸分析(May 14, 2019版)

10連休に及ぶGWを終え、皆様いかがお過ごしでしょうか。五月病になっていませんか?繁忙を極める本業の影響でGWを含めても先月は記事を書けずじまいでした。2019年度に入ってから突如BTC含め広範囲にレートの改善が見られており、5/11からは2017年を彷彿とさせる高騰っぷりです。HHIにも大きな動きがあり、暗号通貨市場は新たな局面を迎えたように見えます。(データは日本時間5/12取得)

5月中旬の暗号資産市況と寡占度(Herfindahl-Hirschman指数)

時価総額和とHerfindahl-Hirschman指数(HHI)を図1に示します。評価対象は時価総額$10k以上のトークンを含む暗号資産全体です。


図1:2016年12月以降の暗号資産市場全体の時価総額和(上段)とHHI(下段)

現在の時価総額和は2000億ドルの壁を越えて約2200億ドルまで回復しました。2019年最高値であり、昨秋(10-11月)の約2100億ドルの水準を越してきました。4/1に跳ね上がってからというもの、底堅く推移し、5/11になって再び大きな跳ね上がりを見せています。Twitterを見ていると必ずしも大きなボラは歓迎されていないようですが、活気が戻ってきていることは喜ばしく思います。

長期的には赤破線で示した上昇トレンドを引き続き維持しています。前回記事で述べたように、2017年初頭に始まった暗号資産バブル、特にアルト・草バブルを経て、2017年以前のトレンドに戻った証左かもしれません。暗号資産が長期的に上昇トレンドを保っているのは心強く、まだまだ底堅く勢いを失っていないとみるべきでしょう。

HHIについては昨夏以降最低水準である2800近くにまで下がっていましたが、4/1以降増加を続け、本稿執筆時点で約3700に達しています。「HHIが上がれば時価総額和は減り、反対にHHIが下がれば時価総額和は増える」というHHIと時価総額和の関係を今は外れ、新たな局面に移っている事を感じさせます。そもそも3500を超えるのは2017年10月に見られたBTC急騰期以来(当時の騰げ方にキナ臭い噂もありますが)であり、それ以前は2017年春のアルトバブル開始まで見られなかった水準です。

時価総額和の増加とHHIの低下がどのランク帯に位置する通貨群によってもたらされたのかを、米Fundstrat社が提供している暗号資産指数を基に考えましょう(図2)。


図2:米Fundstrat社暗号資産指数の推移

これらは2/28を基準としてインデックスを示しており、Fundstrat社の表現を借りれば、FSTOK10は"Top 10 largest Crypto-currencies"(暗号資産市場の9割近くをカバー)、FSTOK40は"Top 11-50 based on market value"、FSTOK250は"Top 51-300 based on market cap"、FSTOK300は"FS Crypto 10, 40 and 250"を対象とした指数となっています。

3月中はFSTOK40&250、つまり低位アルトが幅を効かせて高い増加率を示していましたが、4/1以降はBTCUSDの大幅な増加あってか、主要アルト含むFSTOK10が高いパフォーマンスを示しています。近時、FSTOK40&250は低下傾向にある一方でFSTOK10が優れたパフォーマンスを示していることから、主要アルトの強さと低位アルトの弱さがHHIの急増に寄与していると考えられます。

次に時価総額和とHHIの関係を復習します。


図3:暗号資産時価総額和とHHIの関係

この2変数は概ね黒線で示した直角双曲線の関係、つまり時価総額和とHHIの積はおよそ一定になる関係にあります。ここから大きく外れたのが2017年秋で、まずHHI3500を超えて4000強に達した後、時価総額を増やしながらHHIを下げていきました(赤矢印)。HHIが大きく下がったのはBTCが主導してHHIを上げながら時価総額和を押し上げ、その後にアルトへ流れたためでしたね。今回は果たしてどうなるのでしょうか。

続く図4では市場全体の、図5ではcoinとtoken系に分けた時価総額分布を確認しましょう。


図4:暗号資産時価総額分布

市場全体としては分布が全体的に持ち上がっており、あまり特筆すべき点はありません。時価総額の大きい通貨はその大きさなりに、小さいものは小さいなりの上げ幅といったところです。


図5:coin系、token系別の暗号資産時価総額分布(実線:5/12/2019、破線:12/27/2018)

Coinとtoken別で見ると、相変わらずcoin系の立ち上がりが鋭く(時価総額の差が大きい)、少し上げ幅が大きいように見えます。Token系は時価総額の差が小さく、上げ幅も比較的低い状況で、1000位前後の草レベルトークンは昨冬以降減ってきています。この結果を見ると、おそらく昨冬以降の上げは主にcoin系によるもので、token系の寄与は小さいのでしょう。

昨秋の急落以降どん底感漂っていた界隈にも、「もしや回復するのではないか?」という雰囲気が漂ってきました。私は長期的には上昇トレンドがしばらく続くと思っていたので、近時の動向はさもありなんと言ったところです。

「BTC 200万円」はまだまだ遠い世界かも知れませんが、普及への歩みを着実に進めている通貨・トークンがある内は、やはりこの世界から目が離せないと思うのであります。


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