2019年5月:暗号資産マーケットダイジェスト

5月相場動向概要

先月に引き続き、今月の暗号資産市場もBTC先導で概ね堅調推移となり、市場時価総額は昨年11月のビットコインキャッシュ(BCH)のハードフォークを端に発した暴落前の2000億ドル水準回復に成功した。今月は、通貨人民元安の加速による中国からのキャピタルフライトと、NHKなどの複数メディアによるBTCの大きな価格変動の報道が相まって、市場に新たな資金が流れ込んだことにより相場が押し上げられたことが指摘され、主要暗号資産銘柄は対ドルで軒並み上昇につけた(第1図)。主要アルトコインの対BTC相場は、月初より軒並み強く売り押されるも、月中盤にBTCの対ドル相場が調整に入ると反発。しかし、その後続伸とできた銘柄は一部に止まり、月次では概ねBTC高アルト安の構図となった(第2図)。

4月よりBTCは堅調に推移しているが、流石に2ヶ月でおよそ110%の上昇はペースが速く、この先相場が一気に売り崩される展開には注意したい。こうなれば、市場が総悲観となり、対ドル、対BTC関係なく売り圧力が強まることが考えられる。また、かねて指摘の通り、大局的な流れを変えるかは判断し難いが、メディアによる昨今の暗号資産の価格変動に関する報道は、新規市場参加者を増やすと同時に、底値圏で買い集めていた参加者にとって利益確定のチャンスを作る。今月は既存金融市場からの逃避資金の受け皿となっている模様だが(後述)、こうした逃避買いと新規参入者の買いが利確売りとせめぎ合い、現在の相場はババ抜き状態になっていることが指摘される。

【第1図:主要暗号資産銘柄月次対ドル騰落率(5月1日〜31日現在)】


出所:coinmarketcapより作成

【第2図:主要アルトコイン月次対BTC騰落率(5月1日〜31日現在)】


出所:barchartより作成

テクニカル分析

BTCの対ドル相場は、7日と30日の移動平均線が90日移動平均線でゴールデンクロスを維持。今月前半は相場が7日線に支えられていたが、足元、相場は同水準を割り込んでいる。ボリンジャーバンドでは、バンド幅収縮し相場もセンターライン付近まで戻ってきており、そろそろ目標達成感が伺える。この先、相場がセンターラインを割り込んだら要注意だ。一目均衡表では、強い買いシグナルとなる三役好転を維持している。

【第3図:BTC対ドルチャート】


出所:coinmarketcapより作成

ETHの対ドル相場は7日、30日線が90日線でゴールデンクロスを維持。月初には90日線が200日線上抜けにも成功した。ボリンジャーバンドでは、バンド上辺が折り返し始めており、上昇相場も一先ずは一服となりそうだ。一目均衡表では、強い買いシグナルとなる三役好転を維持している。

【第4図:ETH対ドルチャート】


出所:coinmarketcapより作成

XRPの対ドル相場は、14日の急進で200日線の上抜けに成功した。7日、30日線は90日線でゴールデンクロスを示現し、短中期的に強気相場を示唆している。一方、ボリンジャーバンドでは、バンド幅収縮に伴い相場が1σを割り込んでおり、目標達成感も伺える。相場は依然センターラインの上で推移しているが、同水準を割り込んだらトレンド反転に注意するべきだろう。一目均衡表では、14日に三役好転を示現。一方で、相場の方向感を示す基準線は横ばいとなっており、6月上旬に変化日(雲の捻れ)も出現している。

【第5図:XRP対ドルチャート】


出所:coinmarketcapより作成

ビットコインネットワーク

ビットコインのハッシュレートは価格の上昇と共に今月も増加し、足元、昨年急落前の53 Ehash/S周辺まで戻している(第6図)。現在のマイニング推定損益分岐点は、*3500ドル〜6500ドルとなっており、マイニングによる月間報酬総額も3ヶ月連続で増加しているため、マイナーは安定して収益を挙げられていることが指摘される(第7図)。このため、足元のネットワークは安定しており、昨年11月に起きたようなマイニング勢によるBTCの叩き売りなど、ネットワーク関連のリスクは極めて低いと言えるだろう。

*Antminer S9を0.05ドル/kWh〜0.1ドル/kWhで運用した際の推定損益分岐点。CoinWarzより作成。

【第6図:ビットコインのディフィカルティー、ハッシュレートチャート】


出所:blockchain.comより作成

【第7図:ビットコインマイニング月間報酬総額チャート】


出所:blockchain.comより作成

 

元安&株軟調で暗号資産に逃避資金流入か

米中貿易摩擦の影響により、景気先行きの懸念から今月は月初より人民元安が加速した。元は今月、対ドルで年末年始の上昇分をものの2週間ほどで一気に吐き出し、昨年11月ぶりに1ドル=6.9元台で推移している。

暗号資産市場では、こうした元安の影響で中国からの逃避資金が市場に流入しているとの見方が強い。直接的な影響があるか断定はできないが、事実、今週は1ドル=7元の防衛線に接近し元安に歯止めがかかり、それと同時にBTCも揉み合う展開となっている。

また、元安のみならず、5月は株式市場からの逃避資金も暗号資産市場に流入したことが指摘される。今月は、NYダウを始め主要株価指数が軒並み高値圏で軟調推移となった上、主要国通貨も対円で下落しており、全体的にリスクオフムードが伺える。

こうした手詰まり感の強い局面で、短期筋のトレーダーは利益を求め強い上昇トレンドにあるBTCなどの暗号資産を取引していてもおかしくないだろう。

とは言え、こうした動きが実際にどれだけのマーケットインパクトを有するかは判断し難く、BTCがリスクオフシナリオで買われる「安全資産」と断定するのは控えたい。海外を中心に、ビットコインがデジタルゴールドであるという見解が広まっているが、足元で暗号資産が逃避資金の受け皿となっているのは、あくまで相場が強い上昇トレンドを形成しているからと言える。例えば、今年3月に英国の欧州圏離脱(ブレグジット)の当時のタイムリミットに迫った際、既存金融市場ではリスクオフムードとなったが、暗号資産市場は無反応であった。更に、昨年10月に世界同時株安が起きた際に至っては、株価に追随するように暗号資産は軒並み売られた。ブレグジットの際も、世界同時株安の際も、BTCをはじめとする主要暗号資産の相場は、はっきりとしたトレンドの無い状態であった。よって、この先も暗号資産が既存金融市場からの逃避資金の受け皿となるか否かは、この先のトレンド次第ということが言えよう。

6月スケジュール


出所:各種報道、情報サイトより作成


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