金融庁、仮想通貨規制に係るパブコメ詳細を公開
金融庁は4月3日、仮想通貨規制に係る「令和元年資金決済法等改正に係る政令・内閣府令案等」について、パブリックコメントの詳細を公開した。
パブリックコメントについては、172の個人及び団体より延べ398件のコメントの提出があったことが分かった。
金融庁が、仮想通貨の改正資金決済法や改正金融商品取引法に関して、具体的な内容を定める政省令案や内閣府令案を発表。2020年2月13日を締め切りにパブリックコメントの実施を行なっていた。
政省令案や内閣府令案の内容は、電子記録移転権利(セキュリティ・トークン)の適用除外要件や、預り金銭の信託義務化や預かり暗号資産の管理方法(カストディ)のほか、今回最も業界への大きな影響が懸念される『暗号資産のデリバティブ取引規制』にも及び、一般的な取引については、個人向けのデリバティブ・信用取引が「最大レバレッジ2倍」まで引き下げられる点や、板取引が存続できるかが焦点となっていた。
パブリックコメント内容
以下の重要なポイントを抜粋する。
板取引について
- ―板取引に関しては引き続き可能としてほしい。もし、個別の会社が板取引をやるのが問題なようなら、東証みたいな専用の取引所を設けていただくまでは、少なくとも継続してほしい。
-
金融庁
今般の改正は、暗号資産関連デリバティブ取引についていわゆる板取引を禁止するものではありません。
レバレッジを大幅に下げることでのデメリット
- ―金融商品としてリスクヘッジとしての観点から、潤沢な流動性に裏打ちされたデリバティブ取引は必要。レバレッジ倍率を大幅に引き下げるのは逆効果ではないか?
-
金融庁
今般の改正では、暗号資産を用いた証拠金取引(暗号資産信用取引を含む。以下同じ。)について、外国為替証拠金取引(FX 取引)と同様に、販売・勧誘規制等を整備することとしております。
暗号資産を用いた証拠金取引は、FX 取引と同様に、証拠金を上回る損失が発生するおそれのあるリスクの高い取引です。特に、個人顧客を相手方とする高レバレッジの暗号資産を用いた証拠金取引については、
① 顧客保護(ロスカット・ルールが十分に機能せず、顧客が不測の損害を被るおそれ)
② 業者のリスク管理(顧客の損失が証拠金を上回ることにより、業者の財務の健全性に影響が出るおそれ)
③ 過当投機の観点から問題があると考えています。こうしたことを踏まえ、想定元本の 50%以上の証拠金の預託を受けずに業者が暗号資産を用いた証拠金取引を行うことを禁止することとしたものです。
証拠金2倍にすることで、出来高・流動性低下で利用者保護とは相反するのではないか?
- ―証拠金倍率を2倍とすることで、出来高が低下しボラティリティ急増リスクが増すのではないか。 市場流動性が低下し板が薄くなることで、大口取引による相場の乱高下、相場操縦、公正価格での約定能力の低下等が起きやすくなることが懸念される。証拠金倍率の上限を引き下げることにより取引を行う投資家が減少すると、スプレッドが大幅に広がり投資者に不利益を及ぼすのではないか。
-
金融庁
本改正は、
① 顧客保護(ロスカット・ルールが十分に機能せず、顧客が不測の損害を被るおそれ)
② 業者のリスク管理(顧客の損失が証拠金を上回ることにより、業者の財務の健全性に影響が出るおそれ)
③ 過当投機の観点から、個人顧客を相手方とする高レバレッジ取引に対する証拠金規制を導入することとしたものです。
御指摘のような懸念については、業者において、取引ルールの整備等を通じて適切な対応を図ることが基本になると考えられます。
海外への資金流出や、投資家保護の観点から矛盾するのでは、という懸念
- ―海外では高倍率での取引が可能となっているため、証拠金倍率の上限を2倍とすると、投資家は規制のかからない海外業者と取引をするので、投資者保護に欠けるのではないか。
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金融庁
日本の居住者のために又は日本の居住者を相手方として暗号資産を用いた証拠金取引を業として行う場合には、金融商品取引業等の登録が必要となります。
金融庁では、無登録営業を行う業者に対する警告書の発出等の対応を行い、捜査当局及び消費者庁等の関係当局に連絡をするとともに、利用者に対する注意喚起を行っています。さらに、海外の関係当局とも連携を行っているところです。
取引量減少が国内企業のサービス低下に繋がる懸念
- ―証拠金倍率の上限を2倍とすることで、取引量が減少し、国内業者の収益が悪化し、経営が成り立たなくなったりサービス水準が低下したりするのではないか。
-
金融庁
本改正は、
① 顧客保護(ロスカット・ルールが十分に機能せず、顧客が不測の損害を被るおそれ)
② 業者のリスク管理(顧客の損失が証拠金を上回ることにより、業者の財務の健全性に影響が出るおそれ)
③ 過当投機の観点から、個人顧客を相手方とする高レバレッジ取引に対する証拠金規制を導入することとしたものです。
業者の財務の状況等については、モニタリング等を通じて監督等を行ってまいります。
ゼロカットについて
- ―投資家保護の観点からは、投資家が借金を負うリスクを残さないため、レバレッジ規制ではなく、追証が発生しないゼロカット方式を許容すべきではないか? EU のようにゼロカット方式を義務化すべき。
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金融庁
追証が発生しないゼロカット方式の適否及びその義務化については、顧客が損失の可能性を顧みずにリスクの高い取引を行うことを誘引するおそれがあることや、業者のリスク管理等の観点を踏まえ、慎重に考えるべきものと考えられます。
証拠金倍率を決定する上での議論について
- ―証拠金倍率に関する議論が不十分ではないか。議論の公平性を欠いている。
-
金融庁
2018年3月に金融庁に設置された「仮想通貨交換業等に関する研究会」において、
・ 「他のデリバティブ取引と同様の業規制を適用することが基本と考えられる」
・ 「証拠金倍率については、(中略)仮想通貨の価格変動は法定通貨よりも大きいことを踏まえ、実態を踏まえた適切な上限を設定することが適当と考えられる」
・ 「証拠金倍率の上限については、(中略)2倍とすることを基本に検討すべきとの意見があった」
・ 「証拠金倍率の上限については、(中略)2倍とすることを基本に検討すべきとの意見があった」
レバレッジ規制の見直しはありうるか
- ―証拠金の取引額に対する比率は、デリバティブ取引の根源的要素の一つであり、本来、市場の状況等に応じて、機動的に変更されることが投資家保護にも資すると考えられる。また、暗号資産関連店頭デリバティブ取引は他の店頭デリバティブ取引と比して歴史が浅く市場状況や社会での認知度も今後大きく変化することも考えられる。これらの点を考慮すると、当該比率を頻繁に見直すことは個人顧客との取引では望ましくない点もあるが、一定の合理的期間又は一定の条件を設定し、適宜見直しを実施すべきと思料されるがいかがか。見直す必要がないとするのであれば、その理由・根拠を、見直す必要又は可能性があるとされるのであれば、見直しに着手する条件や判断要素を説明してほしい。
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金融庁
一般論として、暗号資産を用いた証拠金取引を取り巻く状況の変化等に応じ、必要な場合には、規制の見直しを検討していくものと考えられます。
ウォレット機能提供と管理権について
- ―利用者だけが暗号資産を移転できるウォレット機能を備えたスマートコントラクトを提供する事業者は、主体的に利用者の暗号資産の移転を行い得る状態になく、「暗号資産の管理」には該当しないとの理解でよいか。
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金融庁
個別事例ごとに実態に即して実質的に判断されるべきものではありますが、御質問のサービスを提供する事業者が、スマートコントラクト内に保管されている利用者の暗号資産を移転するために必要な秘密鍵にアクセスする権限を有しておらず、当該スマートコントラクトによる暗号資産の移転先を指定し、又は変更し得る権限を有していないなど、当該事業者が主体的に利用者の暗号資産の移転を行い得る状態にない場合には、基本的には、資金決済法第2条第7項第4号に規定する「他人のために暗号資産の管理をすること」に該当しないと考えられます。
仮想通貨の貸付について
- ―顧客向けの信用取引を提供している場合で、暗号資産の交換を行う場合、例えば、ETH 対 BTCの交換の取引を行う場合、暗号資産交換業者と顧客との間で、暗号資産の ETH 買建の場合は顧客に対して BTC を貸付し、暗号資産の ETH 売建の場合は ETH を貸付する、貸借契約を行う場合については、金銭の貸付けが発生しないことから貸金業に該当しないと解されるが、その理解でよいか。
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金融庁
貸金業に該当するか否かは、個別事例ごとの実態に即した実質的な判断が必要になるものと考えられますが、一般的に、暗号資産の貸付けは貸金業に該当しないと考えられます。