ビットコイン採掘市場に「黄信号」か、仮想通貨時価総額は1540億ドルに半減

仮想通貨市況

米連邦準備理事会(FRB)が緊急利下げと量的緩和の再開を発表。0~0.25%と事実上のゼロ金利導入や債券保有を7,000億ドル増加させる方針が株式相場にも好感されたが、材料出尽くし感と警戒感からその後は下げに転じた。

これを受け、仮想通貨市場ではBTC価格も56.4万から64.5万円(6,000ドル)の節目まで急騰するも、全戻しで往って来いに。

6,000ドルは、暴落開始地点8,000ドルから起算してちょうど半値戻しにあたる。fib23.6%が14日の最安値4,800ドル付近にあり、下落した場合にサポートし切れなければ、再び最安値付近の4,000ドルを試しに行くおそれもある。一方、6,000ドル上で推移することが出来れば、短期トレンド転換の目も生じる。

日銀は、金融政策決定会合の日程を18、19日から前倒し本日昼過ぎより金融政策の調整を行うことを発表しているが、4月下旬から5月中旬にかけて行われる「本決算発表シーズン」を控え、コロナショックによる企業業績への影響を見極めるべく、市場の反応は渋い。

本決算では、昨年度の業績のみならず、今年度の業績予想(期初予想)も発表され、適正株価水準の先行きを示唆する。

ビットコイン(BTC)市場では、VIX指数急上昇などセンチメントの悪化や、追証回避、および換金売り需要で、マクロ経済指数との連動を余儀なくされている現状がある。

13日の米国株式市場暴落では、ダウ平均株価が過去最大の下げ幅となる2,352ドル値下がり。下落率-10%は、1987年の「ブラックマンデー」以降で最大となる。

BTC市場も同日、売りが売りを呼びパニック状態で暴落。週足で長い下髭を付け、出来高を伴うセリングクライマックスの様相を呈してはいるものの、2018年11月の急落時も、底打つまでに2番底、3番底を試しにいくなど市場回復には時間を要している。世界情勢が好転しない限り、軟調な展開が続くものと思われる。

BTC/JPY 週足

仮想通貨の総時価総額

仮想通貨市場全体の景況感を推し測る指標の一つとして仮想通貨全体の時価総額があるが、これは3月16日時点で1540億ドル(1540億ドル)まで減少。ビットコイン(BTC)など金融市場全体の暴落に伴い、直近高値、BTC=10,500ドルを記録した2020年2月15日の3050億ドル(32.7兆円)から半減している。

coinmarketcap.com

過去最低値は、ビットコインキャッシュ(BCH)の分裂騒動に伴う、ハッシュウォーで相場急落した2018年12月の1030億ドル(11兆円)。現在は、過去最低水準にあることがわかる。(赤線)

coinmarketcap.com

最高値は、2017年末からのバブル相場でピークを付けた2018年1月8日で、市場時価総額は8150億ドル(87.4兆円)に及んでいた。

マイニング状況

blockchain.comによると、BTCのマイニング計算力を表すハッシュレート(採掘速度)は、大幅減少。 ピーク時には1.36億TH/sだったが、15日には1億TH/sを割り込んだ。

ハッシュレート(採掘速度)は、ビットコイン(BTC)などPoW通貨をマイニングをする際の「秒間計算力」を示すものであるが、今回新型コロナウイルス感染拡大の影響で中国拠点の一部マイナーの活動が一時停滞してたことも、市場不安のトリガーとなったことが指摘される。

マイニングにおけるハッシュレート推移は、ビットコインネットワークの採掘状況や、関連企業の動向を知る貴重なデータとして、ビットコイン価格と比例した推移を見せてきた。2018年9月には、市場急落とともに中小マイナーの撤退が影響し大きく下落、相場と相互作用する形で、BTC相場の下落要因に挙がっていた。

今回のBTC価格の急落が業績に直結するマイナー収益を逼迫するなか、5月にはマイニング報酬のBTCが半減する「半減期」が迫っており、コロナショックによる中国拠点の稼働リソースの観点を踏まえ、ダブルパンチを危惧する声も上がる。

関連:「ビットコイン半減期」が一転 仮想通貨市場の懸念材料になる可能性

新型ASICマシンの投入などでハッシュレートは2018年のバブル崩壊以降も上昇傾向にあったが、半減期需要を見越して強気目線を堅持していた大手マイナーが、暴落による「採算割れ」で弱気に転じれば、採算ラインを抑えられる大手マイナーにBTCネットワークが寡占化され、セキュリティリスクが高まるなど負のスパイラルに陥るおそれもある。

ビットコインのような「Proof of Work(PoW)」アルゴリズムを採用する仮想通貨に対して、特定の悪意を持った集団が膨大なマイニングパワーを持つと、「51%攻撃」のリスクなど懸念が高まるからだ。

国内最大手のマイニング事業を行うSBIホールディングスの北尾社長は、大手マイナーの内紛に端を発したハッシュ戦争で仮想通貨市場が激震した2018年12月、以下のような見解を示していた。

仮想通貨市場における最大の問題の一つは、中国で産業向け電気料金が政府の援助で安価だったため、ビットコインマイニングが一気に促進され、中国マイナーの寡占状態にあることだ。(中略)

このような保有構造を改善するため、今後SBI社が採掘シェアを獲得することで、市場健全化のためには「安定株主」のような存在が必要であり、市場の健全化を目指す。

SBIホールディングスは今年2月、仮想通貨マイニング子会社「SBI Crypto」が、IT企業Northern Data AGとデータセンター運営企業Whinstone USと、パートナシップを締結、米テキサス州で大規模なマイニング事業を開始することを発表した。

独マイニング企業Northern Bitcoinの子会社米Whinstoneプロジェクトマネージャーは、世界最大級のマイニングファーム建設について、「テキサス州の安定した効率的なエネルギー資源は、仮想通貨マイニングの成長に不可欠な基盤となる。ロックデールは石炭が豊富で、風力エネルギーも発展しているため、電気代が安価で高性能のコンピューターを駆使するマイニングに適した場所だ。」と主張。ブルームバーグの報道によれば、GMOインターネットも同州でのマイニング事業に参画している。

SBIグループは2018年12月当時、「特定の地域に偏在するマイニング状況の是正を図るとともに、デジタルアセットエコシステムにおける機能補強(流動性確保、クリアリングなど)を遂行。アクティブマイナー(取引承認者)として市場発展に寄与する」としていた。

しかし、既存の有力マイナーが淘汰されれば、逆境は中・長期的に見れば「好機」にもなり得る。ビットコイン(BTC)暴落を逆手に取り、SBIやGMOなどの信頼性の高い国内上場企業による採掘シェア拡大を含め、市場健全化の促進が期待される。

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